今や希少な3台のセダンに迫る!
バブルの名残
クルマのおもしろさは、時代の波に洗われたあとにくる。発表からある程度の年月を経ると、新車当時は思ってもみなかった魅力を、“モダンクラシック”として発揮するモデルがあるのだ。
たとえば、1990年代前半の日本車。1980年代のバブル景気こそ崩壊していたものの、まだ名残があったこともあって、贅沢なラインナップが展開されていた。
1990年、大蔵省から銀行に対して、不動産向け融資の抑制を求めた総量規制が、市場の浮かれた気分を引き締めた。ただし。自動車業界は1980年代にすでにプレミアムカーの開発と生産準備に入っていたため、1990年代前半まで、贅沢な高価格車が各メーカーから発売されたのだ。
そこで、バブルの香りが残る3台のセダンを紹介する。
(1)トヨタ「セプター」トヨタが1992年に導入したセプターは、北米工場で作られていたモデルだ。ステーションワゴンとクーペが北米生産車で、それだけでは……と、日本製のセダンもラインナップにくわえた。3モデルというかなりタイヘンな展開である。
1990年代前半の日本車で興味深いのは、このような米国生産車の逆輸入だ。米国工場生産だから、べつに“逆”ではなく、一般的にいえば輸入車なのだけれど、当時はそう呼ばれた。
なぜ、日本の自動車メーカーは米国生産のクルマを売ったのか。米国で日本車が売れすぎたため、選挙をにらんだ米国の政治家たちが、現地生産の日本車に米国製の部品を多く使うよう求め、さらに日本メーカーは、米国製品として現地生産の自社ブランド車を日本市場に導入することになったのだ。
セプターでとくに人気があったのはステーションワゴン。ホイールベースは2620mmとさほどではないものの、ボディは全長4820mm(3.0G)もあって押出しが強い。くわえて、ボルボを彷彿とさせるほど、リアクオーターガラスが大きくて荷室のサイズ感を強調。ウインドウグラフィクスという窓枠の輪郭のデザイン処理もきれいで、質感が高かった。
セプター・セダンは、いってみれば特徴がないのが特徴。全体のイメージは、「セルシオ」をちょっとコンパクトにした感じ。トヨタのラインナップでは、もっとも整ったデザインだった。
当時トヨタのラインナップでは、やや下には「コロナ・エクシヴ」や「カムリ」「ビスタ」があり、上にはホイールベースが同一の「ウインダム」、さらに「マークII」「クレスタ」「チェイサー」など、セダンが豊富。エンジンや価格で絶妙な違いが設けられていたけれど、はたして、購買層が分散。その典型例がセプター・セダンだったと思う(私見)。もっとも保守的なデザインのクルマなのに、レア度が上がってしまうという、ちょっと皮肉な結果になったのだった。
おなじモデルでも北米と日本とでは安全規制や市場の嗜好が違う。そのため、往々にして、大きなバンパーや異なるデザインのヘッドランプ、それにボディカラーや内装材なども独自になりがち。
その点、トヨタは丁寧に日本仕様のセプターを仕上げていた。1980年代後半から内外装の質感を上げることに取り組んでいただけに、セプターでも、合成樹脂のダッシュボードも一体型成型を実現。欧州的というか、シートの仕上げも長足の進歩を感じさせた。エンジンは、当初、3リッターV6で、のちに2.2リッター4気筒を追加。後者にはバランスシャフトを組み込むなど、メカニズムも凝っていたのだ。
セダンが熟成していた時期のモデルであるセプター・セダン。もし中古車市場で見つかったら、意外にいい買い物になるかもしれない。
(2)日産「レパード J.フェリー」1990年代の日産セダンのなかで、マニアック度でピカイチは、1992年登場のレパード J.フェリーだろう。
理由はスタイリングだ。“尻下がり”と、言われた、後端にいくに従って下がっているトランクの傾斜が、妙に落ち着きのなさを感じさせたのが大きな理由とされた。
実は凝りまくったモデルで、従来とは違う新しいタイプの高級車と、当時の日産の開発陣の鼻息は荒かった。実際にV6もあればV8も。あえて後輪駆動方式を採用。リミテッドスリップデフやトラクションコントロール、さらに後輪操舵システム「スーパーHICAS」も組み込んで走りのよさを追求したトップモデルも設定されていた。
同時に内装も凝りまくり。当時、イタリアのスペシャルモデル(ランチア「テーマ8.32」とか)にも採用されていたポルトローナフラウ社のレザーを使ったシートもトップモデル「タイプX」に用意された。
実際にパワフルで、乗り心地もよく、ジャガーやメルセデス・ベンツではない高級車を作ろうという日産の意地を感じさせた。スーパーHICASは作動がやや極端な印象だったが、まぁ、すごいクルマだった記憶がある。
このスタイリングも、いまなら個性として十分アリ。あらためて乗ってみたいモデルだ。
(3)ホンダ「アスコット・イノーバ」大きめセダンのトレンドには、ホンダも乗っかった。1992年に発売した「アスコット・イノーバ」。1989年に発表された「アスコット」のシャシーを使い、そこに4ドアクーペ的な、ちょっとスポーティな雰囲気のボディを載せたモデルである。この組合せもマニアックだし、1世代でモデルライフが終わったのもマニアック。
ベースのアスコットは、いかにも室内が広そうなマジメなデザインのモデル。この頃、(ようやく)ロングホイールベースのモデルが生産できるようになったホンダだけに、他社製品に対してひときわ長めの2720mmのホイールベースと、全長4680mmのボディを組み合わせた。
アスコット・イノーバは、ホイールベースこそ同寸。全長は10mm短かった。魅力は、さきに触れたとおり、スポーティさ。2.3リッターエンジンはパワフルで、かつ、足まわりの設定もハンドリング重視と、ドライバーズカーだった。
インテリアも品がよい仕上げで、後席空間も余裕ある広さ。ただ、当時ホンダ車に多かった前後ダブルウィッシュボーン式サスペンションは、ノーズの低さに同時にこだわったため、動きの自由度に制約が出てしまったせいか、乗り心地はそんなによくなった記憶がある。
当時のホンダ車のなかには、北米を主市場としながら、欧州のスポーティセダンを競合とみて開発したようなモデルがいくつもあった。アスコット・イノーバもそんなクルマだった印象。ある意味しっかりキャラクターがたっていて、こういうセダンがあるマーケットは健全だなぁと、今、思う。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)
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